法人向けの自動車保険

法人向け自動車保険の割引とは?

割引の仕組み割引率を高くする取組みを紹介

業務に自動車を使用している企業・法人は、毎年自動車保険の更新があります。

そして、自動車保険の更新の度に、

「自動車保険の保険料が安くならない・・・」
「自動車保険の割引率が進まない・・・」
「そもそも自動車保険の割引の仕組みが分からない」

このように、自動車保険の割引率がどのような仕組みなのかを分からないまま、更新している企業・法人も少なくありません。

そこで、こちらのページでは、「自動車保険の割引について」分かりやすく解説していきます。

自動車保険の割引の仕組みを知ることで、自動車保険の保険料を抑えるポイント等も理解できるようになります。

法人向け自動車保険の契約方式は2種類

自動車保険といっても、企業・法人が加入する自動車保険には、大きく分けると2種類の契約方式があります。

  1. ノンフリート契約
  2. フリート契約

自動車保険の契約方式によって使用できる割引制度も違ってきます。

自動車保険の割引とは

自動車保険の割引の仕組みは「ノンフリート契約」と「フリート契約」によって大きく違います。

自社で加入している自動車保険が「フリート契約」なのか「ノンフリート契約」なのかを確認してから、使用できる割引制度を確認しましょう。

ノンフリート契約の割引制度

法人が「使用」「所有」する自動車の台数が1台~9台の場合に加入する自動車保険のことを、総称して「ノンフリート契約」といいます。

ノンフリート契約の自動車保険における割引制度は、ご家庭(個人)の自動車保険契約でも採用されている「ノンフリート等級制度」です。
「等級制度」と聞けば、なじみがある人も多いと思います。

しかし、等級制度について詳しく理解している方は多くありません。ここでしっかりと理解しましょう。

ノンフリート契約の割引制度(等級制度)

まずはノンフリート契約の割引制度について説明します。

フリート契約の割引制度はこちら

ノンフリート契約には「等級制度」があります。

自動車保険の等級制度とは、契約者の過去の事故歴に応じて「1等級」から「20等級」まで等級分けをして、等級に応じて割増引率が変動する制度です。

等級による割増引率は下記の表のようになります。

等級 無事故係数の割引率 事故有係数の割引率
1等級 108%割増 108%割増
2等級 63%割増 63%割増
3等級 38%割増 38%割増
4等級 7%割増 7%割増
5等級 2%割引 2%割引
6等級 13%割引 13%割引
7等級 27%割引 14%割引
8等級 38%割引 15%割引
9等級 44%割引 18%割引
10等級 46%割引 19%割引
11等級 48%割引 20%割引
12等級 50%割引 22%割引
13等級 51%割引 24%割引
14等級 52%割引 25%割引
15等級 53%割引 28%割引
16等級 54%割引 32%割引
17等級 55%割引 44%割引
18等級 56%割引 46%割引
19等級 57%割引 50%割引
20等級 63%割引 51%割引

ご覧のように、等級が高くなる(20等級に近づく)ほど保険料が安くなる仕組みです。

逆に、1~4等級の場合には割増が課されるため、保険料が高くなります。
このように、等級には保険料が割引になる「メリット等級」と、保険料の割引率が低くなるか割増になる「デメリット等級」が存在しています。

ノンフリート契約のメリット等級とは

自動車保険のメリット等級とは、一般的には6等級以上の等級のことをいいます。メリット等級の契約については、保険料は「割引」となっています。

ノンフリート契約のデメリット等級とは

自動車保険の新規契約時は6等級からのスタートなので、それよりも等級が低い状態(1~5等級)がデメリット等級となります。デメリット等級の場合、保険料が「割増」になることもあります。 1~3等級になると、保険の引受に条件が付いたり、引受を断られるケースもあります。

デメリット等級になると何が起こるのか?

  • 保険料が高くなるため、保険料負担が重くなる
  • 保険引受に制限を設けられる可能性がある(車両保険の引受ができない、など)
  • 保険の継続・更新を断られる可能性がある(保険自体の引受ができない)

デメリット等級になると、保険の更新を保険会社から断られるケースもあります。また、前契約と異なる保険会社で自動車保険に加入しようとする場合でも、新規の契約を断られる可能性もあります。

そのために、
一旦自動車保険を解約して期間を置いてから加入しなおそう、
ですとか、
黙って新規で加入しなおそう
などと考える方がいるかもしれません。

しかし、デメリット等級は一定期間は引き継がれ、逃げられないということを覚えておいてください。いわゆる「デメ逃れ」を防ぐため、保険会社間では情報交換の制度が設けられています。

デメリット等級は引き継がれる

デメリット等級をリセットすることはできるのか?と思う人も少なくないので、デメリット等級について解説します。

デメリット等級は13ヶ月間逃げられない

ノンフリート契約のメリット等級は満期日から7日以内に更新をしないと等級の引継ぎができませんが、デメリット等級の場合には、13ヶ月の引継ぎ期間があります。

デメリット等級をリセットするには、前契約の保険期間満了から13ヶ月以上経過している必要があります。

もし、リセットしようとすると13ヶ月もの間、無保険の状態になりますので、自動車を保有したままの状態ならば、リスクが高いといえるでしょう。

デメリット等級は保険会社を変えても逃げられない

「デメリット等級になったら、違う保険会社でこっそり契約すれば大丈夫だろう」

このように思うかもしれませんが、これもできません。

保険会社には等級制度の適切な運用を目的とした「1~5等級・割増料率適用対象契約情報交換制度」があります。
保険会社間で前契約の情報が引き継がれるので、前契約の情報を告知しないで自動車保険に加入しても、保険会社にはバレます。

一般社団法人日本損害保険協会
「1~5等級・割増料率適用対象契約情報交換制度」

デメリット契約は契約者・被保険者を変えても逃げられない

契約者・被保険者を変えると等級を引き継がなくても良いなんて聞いたことはありませんか?

その方法もおすすめできません。
そもそも、配偶者や親族間であれば自動車保険の等級データは引き継がれます。

また、別居の親族や友人の名義を借りると、契約自体はできるかもしれませんが、万が一の事故の際に、保険会社の調査が入ることによって実態の確認をされることがあります。

フリート契約の自動車保険の割引制度

フリート契約の自動車保険とは、同一の契約者が「所有」「使用」「管理」している自動車が10台以上の場合に契約する契約方式です。

10台以上の自動車を「所有」「使用」「管理」していて、1年以上の自動車保険契約を結んでいる自動車が10台以上の場合には、保険会社が違っても、原則「フリート契約」にしないといけません。

A保険会社 B保険会社 合計台数 フリート契約
5台 0台 5台 適用不可
5台 3台 8台 適用不可
10台 0台 10台 適用
5台 6台 11台 適用

フリート契約のメリットとは

まずはフリート契約の主なメリットについて紹介します。

  • 割引率が大きくなる可能性がある(最大の割引率がノンフリート契約より大きい)
  • 手続きの簡略化ができる

特にメリットとなるのが、割引率の大きさです。

フリート契約には、2つの割引があります。

  • フリート優良割引(総契約台数に応じた割引)
  • フリート多数割引

フリート優良割引とは、契約者単位で総契約台数や過去の損害率を元にして決定される割引率です。

また、フリート多数割引とは、10台以上の「所有・使用する自動車」を1保険証券で契約する場合に適用される割引です。

ここでは、割引率が大きく変わる可能性がある、フリート契約の優良割引について分かりやすく紹介します。

フリート契約のメリットの詳細については、「フリート契約(10台以上)の自動車保険の特徴と注意点を紹介」のページで詳しく紹介しています。

フリート契約(10台以上)の
自動車保険の特徴と注意点を紹介はこちら

フリート契約の優良割引の計算方法

フリート契約の優良割引は下記の要素によって決定されます。

  1. 総契約台数
  2. 損害率
  3. 前年度のフリート割引率

総契約台数
総契約台数とは、自動車保険に加入している、「所有・使用している自動車」の合計台数のことです。
総契約台数が多くなる程、最大で適用できる割引率の上限が高くなります。

損害率

損害率は下記の計算式で決定されます。

前年度のフリート割引率

フリートの優良割引は、前年度の優良割引率を元に決められます。
前年度の優良割引率は、保険証券や、保険料率決定通知書で確認することができます。

成績計算期間と保険期間の関係

「総契約台数」と「損害率」は「成績計算期間」といわれる期間で計算されます。
「前年度の優良割引率」は「保険期間」で適用されているため、料率決定にあたっては2つの期間を理解する必要があります。

<成績計算期間と保険期間の関係>

図のケースでは、契約期間は4月1日から1年間ですが、成績計算期間は保険始期より6ヶ月前の10月1日からの1年間となります。

成績計算期間の10月1日からの1年間における損害率および計算期間末の総契約台数によって次年度の優良割引が決定します。
なお、損害率が悪い場合には割増料率が適用される場合があります。

ノンフリート契約⇒フリート契約になる場合の割引率の計算は?

フリート契約は10台以上の場合に適用されるとお伝えしていますが、いきなり10台の自動車を所有される契約者は稀です。
徐々に契約台数が増え、いつのまにか10台に到達しているケースがほとんどです。
その場合に、どのようにしてフリート料率を算出するのでしょうか。

10台目の契約を締結したタイミングで、引受保険会社にフリート契約者としての登録を依頼します。そこから第1回目の成績計算期間がスタートし、以下の表のとおりに第1回料率審査日を迎えます。

10台到達日時点 成績計算期間
第1回料率審査日 第2回料率審査日
全車両一括特約あり 10台到達日の属する月の1日から6カ月間 料率審査日の属する月の1日の6カ月前の過去1年間
全車両一括特約なし 10台到達日の属する月の1日から1年間

したがって、優良割引として割引が適用されるのは、多くの場合にはフリート契約者になってから2年目からとなります。
なお、優良割引が算出されるまでは、ノンフリート等級を継続適用することになります。

フリート契約⇒ノンフリート契約になる場合の等級の計算は?

フリート契約からノンフリート契約になる場合には、「読替え等級(※)」を適用して計算します。

  • 読替え等級とは、総契約台数を10台とみなして決定した次回料率審査日に適用すべきフリート割引率を、保険会社の定める「読替え等級表」に従ってノンフリート等級に読替えたもの

フリート契約の割引を進めるためには

フリート契約の割引率を高くするためには、事故を起こさないようにする、事故を起こした場合でも損害を少しでも抑える対策が必要です。

事故を削減し、支払保険金を減らすことで、「損害率」が改善されます。

その結果、優良割引率が良くなり、フリート契約の自動車保険料の削減効果が期待できます。

事故削減対策の代表例としては下記のような対策があります。

  • 安全運転講習会の開催
  • ドライブレコーダーの設置およびデータ分析
  • 事故データの分析
  • ドライバーの運転適性診断の実施 など

事故削減・防止対策は、「ロス・プリベンション」といわれ、単に保険料を引き下げるコスト削減効果としてだけではなく、自動車を所有・使用する企業の社会的使命として実施をすべきでしょう。

【法人の事故削減対策】安全運転講習会の開催

自動車の運転にあたっては事故はつきものではありますが、事故が与える影響・責任を従業員一人ひとりが十分に理解する必要があります。
会社を代表して社用車を運転しているという意識を高めること、また運転の基本操作や交通ルールの確認のために、定期的に実施していることが多いです。
従業員への適切な安全運転の講習を行うことで、事故削減に大きな効果が期待できます。
なお、自動車保険取扱いの保険代理店に相談されれば、実施をサポートしてもらえますので、是非相談してみてください。

【法人の事故削減対策】ドライブレコーダーの設置およびデータ分析

ドライブレコーダーの設置は事故防止に有効です。
事故発生時の動画記録だけではなく、急加速や急ブレーキなどの挙動を検知・記録する機能がある機器も増えているため、車両管理者の方から運転手へのアラートにも活用できます。
また、各保険会社もフリート契約専用のドライブレコーダー特約を用意しています。
事故対応への円滑な活用のみならず、事故防止の取組みに関わるデータ分析にも活用できるため、未設置の方はそちらの活用も検討してみましょう。

【法人の事故削減対策】事故データの分析

事故の発生頻度や発生タイミング(時間、曜日など)などを分析し、対策を実施することも有効です。
フリート契約を契約している保険会社に依頼することで、事故データをレポートとして提供してもらえる場合もあります。
事故の多い運転手が分かれば、自動車運転のない部門に配置転換をするなどの明確な対策も可能になるため、是非保険会社、保険代理店のサポートを活用しましょう。

【法人の事故削減対策】ドライバーの運転適性診断の実施

保険会社の事故防止メニューの中に、運転適性診断があります。
シミュレータを使用しての検査などを有しており、ドライバーの適性を測るうえで有用です。
また、簡易的なアンケートによる適性診断もあるため、業種や従業員数等の実態に応じて必要なサービスを選択してみるといいかもしれません。

このように、フリートの割引率はノンフリート契約に比べて有利な面が多く、また企業側の努力によって改善を図ることが可能な制度となっています。
十分な対策を行うことで、コスト削減効果が期待できます。
一方で、中小企業にとっては事故防止の取組みを社内で内製化することは難しい場合もあると思います。
そのような場合には、保険会社や信頼できる保険代理店を頼って、事故防止の取組みを一緒にやっていくことも有効です。
お近くにご相談できる先がない場合には、当社にて対応が可能かもしれませんので一度ご相談をしてみてください。

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